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福島第一原発事故と経過の詳細の真実 東日本大震災 [東日本大震災 福島原発]

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東日本大震災と津波、福島第一原発の事故。あれから月日が経ちましたが、あの事故はどのような経緯で大惨事につながったのか、詳細を知っている人は多くないと思いましたので、あのときの出来事を振りかえってまとめてみました。できる限り、中立的、客観的に事実を再現することに努力してみました。



「事故の真実を読み取る為の予備知識」
あの事故を振り返り、深く知るには、あらかじめ理解しておきたい事項を述べておきます。

●原子炉の構造
簡単には、核反応を起こす燃料棒は圧力容器という厚さ15cmのステンレス鋼の容器に収まっています。その外側をコンクリートでできた格納容器が覆っていて、大まかに二重構造をしています。



●発電を止めても冷やし続ける必要がある
他の発電所と違って、原発は発電を停止していても冷やし続けないといけません。理由は発電を止めていても燃料のウランの核分裂は続いていて、通常運転時の1%程度の熱は出し続けているからです。
そのため、原子炉の中の燃料は普段は大量の水を循環させ続けて冷やし続ける必要があります。もし水が循環しなければ、たちまち沸騰して水蒸気になり、燃料の棒は2000℃以上になり溶け始めて辺りのジルコニウム合金やステンレス鋼を溶かし、そのうちジルコニウム合金や強い放射線と水蒸気が化学反応を起こして大量の水素が発生し、原子炉の中の圧力が高まり続けて暴走します。この燃料の溶けたものは、原子炉容器の金属やコンクリートを液体にするほどの熱で、容器に穴を開けてしまうほどなのです。

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●核反応をある程度、ブレーキをかける制御棒
原子炉の中には核分裂の進行にブレーキの役目を果たす制御棒というものがありますが、これは燃料棒の間同士に差し込み操作をすることで核反応の進行を最小限にすることができます。ただし、ある程度までは核分裂を抑えることができるだけで、完全に核反応をゼロにすることはできません。

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●原子炉を冷やすには電気が必要
大量の水を循環させて原子炉に冷たい水を送り続けるためには、復水器という冷却設備やポンプを動かし続ける必要があるのですが、それには電気の供給が必要です。
例外として、非常用復水器という緊急用の冷却設備は冷やすこと自体では電気は不要ですが、やはり操作するために弁の開閉が必要で、その操作は電動です。

●電源設備は水に浸かったらもう使えない
原発に限らずどの設備にも言えることですが、電気関係の設備は特別に防水されているものを除いて、水に浸かるともうそのままでは使えません。



「地震発生からの事故への発展経緯」

●3月11日 地震の揺れ発生
1号機 制御棒挿入(核反応を最小限にすることに成功)
2号機 制御棒挿入(核反応を最小限にすることに成功)
3号機 制御棒挿入(核反応を最小限にすることに成功)
4号機 定期検査中で最初から燃料棒は原子炉から抜き取られ、使用済燃料プールに保管済


●地震後
外部からの電力供給がストップ
送電線の鉄塔1基が倒壊、断線、遮断機など変電設備損傷のため。

1号機 非常用ディーゼル発電機が自動起動、非常用復水器による炉心の冷却開始
2号機 非常用ディーゼル発電機が自動起動、非常用復水器による炉心の冷却開始
3号機 非常用ディーゼル発電機が自動起動、非常用復水器による炉心の冷却開始
4号機 非常用ディーゼル発電機が自動起動、使用済燃料プールの冷却開始

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1-3号機の状態


●地震発生から50分後に津波襲来

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1号機 非常用発電機、電源盤が水に浸かり全てダウン(非常用復水器の弁を閉じた状態時に)
2号機 非常用発電機、電源盤が水に浸かりダウン高圧注水系弁開閉用ポンプのみ生き残る
3号機 非常用発電機ダウン一部電源設備と非常用バッテリー、高圧注水系ポンプのみ生き残る
4号機 非常用発電機、電源盤が水に浸かり全てダウン

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電源関連設備の大半が低い位置にあったため、水が流れ込んで浸水することになった。

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1-3号機の状態

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水没した電源室 2号機


●津波襲来後の24時間
1号機 原子炉内の水蒸発、水蒸気、水素で高圧になり、圧力容器、格納容器損傷、水素漏れ
2号機 高圧注水系弁開閉用ポンプ(電力不要)を冷却に転用し冷却続ける
3号機 非常用バッテリー、高圧注水系ポンプで冷却続ける
4号機 使用済燃料プールの温度上昇

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この時点での1号機の状態

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この時点での2号機の状態

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この時点での3号機の状態

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4号機 使用済燃料プールの位置


●3月12日 1号機爆発
1号機 水素爆発、建屋吹き飛ぶ、損傷原子炉は残るが燃料溶融物が格納容器侵食
2号機 未水没電源盤に電源車で電気供給準備中、1号機爆発でケーブル損傷、使用不能
3号機 非常用バッテリー、高圧注水系ポンプで冷却中
4号機 使用済燃料プールの温度上昇

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1号機 水素爆発


●3月13日 午前2時
1号機 × 損傷原子炉から水素、放射性物質漏れ続く、燃料溶融物が格納容器侵食
2号機 高圧注水系弁開閉用ポンプ(電力不要)で冷却中
3号機 非常用バッテリー電力切れ寸前、高圧注水系ポンプを停止、冷却できず、水素発生
4号機 使用済燃料プールの温度上昇、建屋内に3号機の水素が流れ込む

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この時点での3号機の状態

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3号機から4号機への水素の流入


●3月14日 午前2時以降
1号機 × 損傷原子炉から水素発生、放射性物質漏れ続く、燃料溶融物が格納容器侵食
2号機 高圧注水系弁開閉用ポンプ(電力不要)で冷却中
3号機 ディーゼル駆動ポンプ(低圧注水)に切替えるための炉内減圧作業難航。水素発生続く
4号機 使用済燃料プールの温度上昇、建屋内に3号機の水素が流れ込む

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この時点での3号機の状態


●3月14日 午前9時
1号機 × 損傷原子炉から水素発生、放射性物質漏れ続く、燃料溶融物が格納容器侵食
2号機 高圧注水系弁開閉用ポンプ(電力不要)で冷却中
3号機 原子炉減圧されたことを確認、消防車の注水開始も燃料溶融侵食、水素漏れ
4号機 使用済燃料プールの温度上昇、建屋内に3号機の水素が流れ込み続ける

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この時点での3号機の状態


●3月14日 午前11時 3号機爆発
1号機 × 水素発生、放射性物質漏れ続く、燃料溶融物が格納容器侵食
2号機 消防車ホース準備中、3号機爆発で損傷、使用不可に
3号機 水素爆発、建屋吹き飛ぶ、損傷原子炉は残るが燃料溶融物が格納容器侵食、放射性物質漏れ
4号機 使用済燃料プールの温度上昇、3号機の水素が流れ込み続ける

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3号機 水素爆発


●3月14日 午後1時
1号機 × 水素発生、放射性物質漏れ続く、燃料溶融物が格納容器侵食
2号機 高圧注水系弁開閉用ポンプ(電力不要)が機能ダウン、燃料溶融、圧力容器損傷
3号機 × 水素発生、放射性物質漏れ続く、燃料溶融物が格納容器侵食
4号機 使用済燃料プールの温度上昇、3号機の水素が流れ込み続ける

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この時点での2号機の状態


●3月14日 午後7時
1号機 × 水素発生、放射性物質漏れ続く、燃料溶融物が格納容器侵食
2号機 消防車注水開始も水素発生、炉内高圧化で格納容器損傷、水素漏れ
3号機 × 水素発生、放射性物質漏れ続く、燃料溶融物が格納容器侵食
4号機 使用済燃料プールの温度上昇、3号機の水素が流れ込み続ける

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この時点での2号機の状態


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※2号機が爆発しなかったのは、1号機爆発の際の衝撃で建屋の側面にあるハッチが開いたために そこから水素がうまく逃げたため爆発に至らなかったようです。


●3月15日 午前6時
1号機 × 水素発生、放射性物質漏れ続く、燃料溶融物が格納容器侵食
2号機 消防車注水冷却中
3号機 × 水素発生、放射性物質漏れ続く、燃料溶融物が格納容器侵食
4号機 水素爆発、建屋吹き飛ぶが、使用済燃料プールと燃料は無事

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4号機 水素爆発



コメント
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今回の事故に見舞われたのは、福島第一原発の1~4号機であり、

5、6号機
海抜がわずかに高く、外部電源を喪失することがなかった。
第二原発
見舞われた津波の高さが低く、地震・津波の後も外部電源、電源設備が使用可能だった。
女川原発
海抜の位置が福島第一原発よりも高いことと、外部電源を喪失することがなかった。

ことを考えると、いずれも電源確保に成功し、冷却を続けることが可能だった点が明暗を分けたと思われます。外部電源を複数確保することと、設計上電源設備などを高階位置などの浸水被害に遭わない位置に設置して、構造を改善することが重要ではないでしょうかね。

今回の事故対応にあたった若い作業員のうち800人以上が既にこの世から去られたと聞きます。
せめて、超危険なものを超危険な状態のまま、横着に使わないで欲しいものですね。
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福島第一原発収束作業日記: 3.11からの700日間



311のあのときから、著者であり福島第一原発作業員だったハッピーさんがつぶやき続けたものをまとめた本です。実際に現地で事故を目の当たりにした者でしかわからないドラマがそこに記されています。
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停止後の燃料内で核分裂など起きていない
起きているのは超ウラン元素や核分裂生成物の崩壊
by お名前(必須) (2015-03-21 00:28) 

oideyasu

おいでやす堂管理人です。
その超ウラン元素の崩壊が核分裂です。
by oideyasu (2015-05-10 10:56) 

U

中性子が当たらない限り「核分裂反応」ではない。
崩壊と分裂を同一視して述べると記事の信ぴょう性が曖昧になる。
by U (2018-09-29 18:09) 

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